仙台づけ丼

2019/09/09

味わい道しるべ

仙台づけ丼

写真提供:(公財)仙台観光国際協会

宮城県は、世界三大漁場の一つ、三陸沖を抱える海の幸王国。大小140以上の漁港があり、このうち気仙沼、石巻、塩釜は、全国で13港しかない特定第3種漁港に指定されています。
新鮮で豊富な海の恵みを活かした美味を――実は仙台づけ丼の発案者は意外な人物。東北大学大学院工学研究科の堀切川一男教授のアイデアを基に、官民が協働して2009(平成21)年に商品化しました。ここで掲げられたのが5つの“おきて”。

一、地場産の魚を使うべし。
一、宮城県産米のすし飯を使うべし。
一、料金を明示すべし。
一、各店独自性を出すべし。
一、『づけ丼』が真の宮城名物となるよう日々精進すべし。

――提供する各店が工夫を凝らし、創作力を発揮し、味を磨いています。タレは、カツオと昆布のあっさりダシ、仙台味噌を隠し味にしたもの、または煮切り醤油をつかった濃い口など様々。ネタ良し、タレ良し、見目も良し。新名物から“真”名物になる日も近いことでしょう。

杜都・美味 -moritobimi-

塩竃すし哲 S-PAL仙台店

仙台づけ丼 2,380円(税込)

私がこのお店を好きな理由(ワケ)

仙台市から東に約15㎞、塩竃市は人口あたりの寿司屋店舗数が日本一といわれます。そんな激戦区の中で、最も名を馳せているのが「すし哲」さんでしょう。有田焼の絵皿に盛られた美しいにぎりと名物・毛ガニの味噌汁を求めて、仙台から足しげく通ったファンも多くいました。寿司好きが待ちわびた名店の仙台進出です。さて、焼印入りの卵焼きときゅうりの飾り切りがあしらわれた仙台づけ丼、見た目からすでにおいしさの予感。はやる気持ちで一口…舌が納得する極上のネタ、あとから追っかけてくるタレのほんのりとした甘み、刻み海苔が磯の香りの余韻を残します。締めに出される自家製デザートも絶品。手抜かりのない仕事ぶり、まさに社是である“握る手に、心”の真骨頂です。

お寿司と旬彩料理 たちばな

仙台づけ丼 1,700円(税別)
仙台づけ丼極み 3,000円(税別)

私がこのお店を好きな理由(ワケ)

創業91年、一番町の中心に店を構えてから70余年という「たちばな」さん。季節の花が迎えてくれるスタイリッシュで和モダンな店内は、いつも買い物帰りのお客さんで賑わっています。㈱橘寿司の三代目にして店長の相澤直哉さんは、仙台づけ丼の開発に携わった一人。ご当地グルメの盛り上げのために尽力されています。そして販売実績第1位という人気の仙台づけ丼は、漬け地の隠し味に仙台味噌と穴子の煮ツメが使われており、食べ応えのあるしっかりとした味わいが特徴。県内産の焼き海苔が添えられていて、「手巻き風にしてどうぞ」とはうれしい配慮。「極み」は16種類のネタがふんだんに盛られた海鮮宝石箱のような逸品。こちらもぜひ召し上がってみてください。

富貴寿司

仙台づけ丼 1,760円(税込)

私がこのお店を好きな理由(ワケ)

東北随一の歓楽街・国分町。そのメイン通りと一番町をつなぐ虎屋横丁に店を構える「富貴寿司」さん。丁寧な手仕事が光る江戸前握り、珍しい地ダネを楽しめると評判のお店です。折敷に揃えられているのは「ホタテ割り箸」。ホタテの貝殻を再生したバイオマス製品なのだとか。仙台づけ丼のネタは大ぶりの切り身がとりどり。提供する直前に漬け地にさっとくぐらせ、魚本来のうまさを活かす工夫がされています。鮮度に自信がある証左でしょう。さわやかな後味を添えてくれるのは、ネタとすし飯の間にひっそりと仕込まれた刻みガリ。おいしさに手間ひま惜しまずの姿勢が貫かれています。魚の種類を問うと、紙に書いて渡してくれました。真摯にお客さんと向き合う姿勢が、老舗の看板を支えています。